総合技術監理部門設置の経緯
2000(平成12)年9月26日、技術士審議会一般部会は、既存の技術部門では以下の2つの能力の全てを認定できないため、新たに「総合技術監理部門」を設置することを宣言しました。
1.業務全体を俯瞰し、業務の効率性、安全確保、リスク低減、品質確保、外部環境への影響管理、組織管理等に関する総合的な分析、評価を行い、これに基づく最適な企画、計画、設計、実施、進捗管理、維持管理等を行う能力
2.万一の事故等が発生した場合に拡大防止、迅速な処理に係る能力
(基本的な考え方)
近時の技術業務の総合化、複雑化等の進展に伴い、業務全体の一元的な把握、分析に基づき、技術の改善やより合理的なプロセスの導入、構築を行うことにより、安全性の向上と経済性の向上を両立させることを目指した監督、管理が重要となっている。
このためには、技術士としての実務経験のような高度かつ十分な実務経験を通じて修得される照査能力等に加えて、業務全体を俯瞰し、業務の効率性、安全確保、リスク低減、品質確保、外部環境への影響管理、組織管理等に関する総合的な分析、評価を行い、これに基づく最適な企画、計画、設計、実施、進捗管理、維持管理等を行う能力とともに、万一の事故等が発生した場合に拡大防止、迅速な処理に係る能力が必要である。
こうした能力の認定については、一部は、既存の技術部門が対応するものの、全体としては、現行の技術部門では対応することができないため、他の部門とは異なる技術を対象とする技術部門として、新たに「総合技術監理部門」を設置する。本部門の設置により、総合的な技術監理に係る諸課題に対応でき得る能力を備えた人材を育成するとともに、その活用を図ることが重要である。
出典:平成25年5月13日 第7期 技術士分科会 制度検討特別委員会(第1回)配付資料 参考6『総合技術監理部門について』
総合技術監理とは
「技術士 総合技術監理部門 キーワード集」の1~4ページにかけて、総合技術監理とは何かが示されています。以下、要約します。
- 科学技術の巨大化・総合化・複雑化が進展している中、近年の製造物・製品は、初期段階では高価、品質保持不可、不安全等、様々な不安定要素を内包しており、一旦取り扱いを間違えると社会への影響も大きくなっています。そのため、一般の人々が科学技術の豊かさ、便利さを受けるには様々な不安定要素を解決するための仕組みが必要になります。
- 仕組みを継続的に運用し様々な科学技術を活用するには、各要求事項の個別管理だけでは不十分です。業務全般を俯瞰的に把握・分析し、複数の要求事項を総合的に判断して全体的に最適な企画、計画、実施、対応等を行う必要があります。
- 総合技術監理では、5つの管理(経済性管理、人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理)を独立に行うのではなく、総合的に勘案してトレードオフを調整する必要があります。事業運営や組織活動の現状を分析し、課題の設定を行い、その課題を解決する必要があります。その際、科学技術のめざましい進展と広範囲にわたる影響を考慮して、高い倫理観、国際的視点を持って継続研鑽することが重要です。
以上を踏まえると、総合技術監理は、公益確保を大前提に、事業運営や組織活動にあたり、5つの管理を駆使してトレードオフを調整し全体最適を継続することです。
つまり、総合技術監理は、公益確保した事業、リスクマネジメント、トレードオフ調整を継続することです。