「問題」と「課題」がどこで使われるか?
技術士第二次試験 総合技術監理部門の必須科目(記述式)の問題において、「問題」、「課題」という言葉が使われます。
「問題」と「課題」の定義
2019(令和元)年度以降の技術士第二次試験 総合技術監理部門の必須科目(記述式)の問題では、「問題」と「課題」の言葉の定義が明確に統一されています。
なお、2018(平成30)年度以前の技術士第二次試験 総合技術監理部門の必須科目(記述式)の問題では、「問題」と「課題」の言葉の定義が曖昧です。人によっては【技術士試験に「問題」と「課題」に明確な定義はない】と言いますので、ご注意ください。理由は、辞書を引くと、「問題:解決しなければならない事柄」、「課題:解決しなければならない問題」とあり、「辞書では「問題」と「課題」が同じであるため、自分で好きなように定義して使って良い」という解釈に基づくためです。
現在の技術士試験における「問題」と「課題」の言葉の定義の違いを肝銘しましょう。
技術士試験における「問題」と「課題」とは
結論から申し上げます。現在の技術士試験においては、以下です。
「問題」:「あるべき姿(目標・水準)と現状とのギャップ(差異)」。
「問題=目標(水準)値-現状値」。
「値」とあるため、数字で示す必要があります。
「あるべき姿」と比較して「現状」が不足しているため、記載が「ネガティブ」な表現になります。
「課題」:「問題を解決するためになすべきこと」。
「問題」の「ネガティブ」な状態を解決するため、記載が「ポジティブ」な表現になります。
理由は、「修習技術者のための修習ガイドブック-第3版-」の11ページに「3.2.1 問題分析」として以下の記載があるためです。
3.2.1 問題分析
「問題分析」とは「問題」の背景・要因・原因を明確にし、問題を解決するためになすべき「課題」を適切に設定することである。ここでは、「何が問題であるのか=問題は何か」を明確にすることが重要である。
「問題」とは、「あるべき姿(目標・水準)と現状とのギャップ(差異)」と定義し、【 問題=目標(水準)値-現状値 】で表現する。いろいろな角度から背景・要因・原因を調査・分析し、「この問題を解決するための課題」を適切に設定する能力が問題分析能力である。
「あるべき姿」を明確にすることによって、「現状とのギャップ」が認識可能となる。
「あるべき姿」は組織内で共有できる場合もあれば、各個人で食い違うこともある。
問題を明確にし、分析するためには、関係者間で「あるべき姿」を共有することが重要である。
出典:日本技術士会ホームページ『修習技術者のための修習ガイドブック-第3版-』
「問題」の背景・要因・原因を明確にし、「課題」を適切に設定しましょう。
「何が問題であるのか=問題は何か」を明確にすることが重要です。
また、「修習技術者のための修習ガイドブック-第3版-」の11ページには「問題解決のステップ例」として以下の記載があります。
①~②:問題抽出です。
理由は、①で問題を明確にして、②で背景、要因、原因の調査・分析・整理をするためです。
③~⑥:問題解決です。
理由は、③で問題を解決するためになすべきこと(課題)を設定し、④で実現性や優先順位を考慮して具体的な対策を立てた上で、⑤で計画を立て、⑥で実施するためです。
③~⑥:課題遂行ともいえます。
理由は、③で課題を設定し、④で具体的な対策を立てた上で、⑤で計画を立て、⑥で実施しているともいえるためです。
「問題解決のステップ例」を以下に示す。
①「問題発見」(問題の明確化:目標値と現状値のギャップ)
②「問題分析」(背景、要因、原因の調査・分析・整理)
③「課題設定」(問題を解決するために為すべき課題を設定)
④「対策立案」(課題に対する実施事項の立案、採否・優先順位の決定)
⑤「実行計画書の作成」(実施事項の詳細、スケジュール、実施結果の評価基準)
⑥「対策実施」(実施、結果の確認)
⑦「評価」(結果の効果の評価)→①以降のステップ
②、③のステップに問題分析能力が必要となる。そして、技術士には複合的な問題を明確にし、問題を解決するために、問題分析能力が求められている。
出典:文部科学省ホームページ『『修習技術者のための修習ガイドブック-第3版-』』
ちなみに、「問題分析能力」は、いろいろな角度から背景・要因・原因を調査・分析し、課題を適切に設定する能力になります。
令和4年度 技術士第二次試験 受験申込み案内
ここで改めて「令和4年度 技術士第二次試験 受験申込み案内」の7~8ページを見ると、「【A】総合技術監理部門を除く技術部門 Ⅰ必須科目」として以下の記載があります。
【問題解決能力及び課題遂行能力】
- 概 念:社会的なニーズや技術の進歩に伴い、社会や技術における様々な状況から、複合的な問題や課題を把握し、社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て、問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力
- 出 題 内 容:現代社会が抱えている様々な問題について、「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から、多面的に課題を抽出して、その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う。
また、同じく「令和4年度 技術士第二次試験 受験申込み案内」の7~8ページに、「【A】総合技術監理部門を除く技術部門 Ⅲ選択科目」として以下の記載があります(「Ⅰ必須科目」と「Ⅲ選択科目」の「概念」の記載は全く同じです)。
【問題解決能力及び課題遂行能力】
- 概 念:社会的なニーズや技術の進歩に伴い、社会や技術における様々な状況から、複合的な問題や課題を把握し、社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て、問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力
- 出 題 内 容:社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象として、「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い、多様な視点からの分析によって問題解決のための手法を提示して、その遂行方策について提示できるかを問う。
まさしく、【問題解決能力及び課題遂行能力】は、「修習技術者のための修習ガイドブック-第3版-」の11ページの「問題解決のステップ例」「①~②:問題抽出」、「③~⑥:問題解決=課題遂行」のことです。
ここで、「令和4年度 技術士第二次試験 受験申込み案内」の6ページを見てみます。「【B】総合技術監理部門 Ⅰ必須科目」として以下の記載があります。
【課題解決能力及び応用能力】
この点、「【A】総合技術監理部門を除く技術部門」では【問題解決能力及び課題遂行能力】が要求されているのに対し、「【B】総合技術監理部門」では【課題解決能力及び応用能力】が要求されています。
「【B】総合技術監理部門」では課題を遂行するだけでなく、解決するという一段上の能力が要求されていることが分かります。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)における「問題解決」
「問題解決」として『技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)』にも以下の記載があります。
【問題解決】
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して,これらの内容を明確にし,調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
・複合的な問題に関して,相反する要求事項(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等),それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮したうえで,複数の選択肢を提起し,これらを踏まえた解決策を合理的に提案し,又は改善すること。
出典:文部科学省ホームページ『技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)』
ここも同じく、【問題解決】は、「修習技術者のための修習ガイドブック-第3版-」の11ページの「問題解決のステップ例」のうち「①~②:問題抽出」、「③~⑥:問題解決=課題遂行」のことです。
【結論】技術士試験における問題と課題とは
技術士第二次試験においては、「【A】総合技術監理部門を除く技術部門」、「【B】総合技術監理部門」のどちらでも、以下となります。
「問題」:「あるべき姿(目標・水準)と現状とのギャップ(差異)」。「問題=目標(水準)値-現状値」。
「課題」:「問題を解決するためになすべきこと」。
技術士試験 総合技術監理部門に臨むにあたり
まず、技術士第二次試験 総合技術監理部門の必須科目(記述式)の問題では、以下を強く意識しましょう。
「問題」:「あるべき姿(目標・水準)と現状とのギャップ(差異)」。「問題=目標(水準)値-現状値」。
「課題」:「問題を解決するためになすべきこと」。
その上で「修習技術者のための修習ガイドブック-第3版-」の11ページの「問題解決のステップ例」「①~②:問題抽出」、「③~⑥:問題解決=課題遂行」を、制限時間内に解答用紙に表現しましょう。
(再掲)「問題解決のステップ例」
①「問題発見」(問題の明確化:目標値と現状値のギャップ)
②「問題分析」(背景、要因、原因の調査・分析・整理)
③「課題設定」(問題を解決するために為すべき課題を設定)
④「対策立案」(課題に対する実施事項の立案、採否・優先順位の決定)
⑤「実行計画書の作成」(実施事項の詳細、スケジュール、実施結果の評価基準)
⑥「対策実施」(実施、結果の確認)
⑦「評価」(結果の効果の評価)→①以降のステップ