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技術士受験

技術士受験 記述式 論理的なつながり

「論理的なつながり」とは

「技術士試験の過去問(二次試験:総合技術監理部門)」の(記述式 Ⅰ-2)を見ると、問題文の中に以下のとおり、「論理的なつながり」という記載があります(平成27年度、平成25年度~平成21年度には、この記載がありません)。

この記述式における「論理的なつながり」とは、どのように考えて技術士試験に臨めば良いのでしょうか?

結論から申し上げます。

「論理的なつながり」とは、「結論と中身のつながりをしっかり考えて書く」ことです。理由は、このことを徹底すると文章が分かりやすくなるためです。「この2つの文章はつながるか?」「この2つの文章がつながらないとしたら、間をどのように埋めようか?」等を考えて、文章を書くことが重要です。

なお,書かれた論文を評価する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを特に重視する。

出典:公益社団法人 日本技術士会
令和3年度技術士第二次試験問題〔総合技術監理部門〕必須科目 I -2』、
令和元年度技術士第二次試験問題〔総合技術監理部門〕必須科目 I -2』、
平成30年度技術士第二次試験問題〔総合技術監理部門〕必須科目 I -2』、
平成29年度技術士第二次試験問題〔総合技術監理部門〕必須科目 I -2

論文の記述に当たっては,被害や対策が事業場にとって特徴的で,かつその説明が専門分野外の人(例えば専門が異なる総合技術監理部門の技術士)にも分かりやすいものであるよう留意されたい。書かれた論文を評価する際,そのような工夫・配慮がなされているかどうかを含め,視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを重視する。

出典:公益社団法人 日本技術士会
令和2年度技術士第二次試験問題〔総合技術監理部門〕必須科目 I -2

なお,定量的な記述が可能なものについては,相対的な表現(「大きい」,「小さい」,「高い」,「低い」など)は避け,できるだけ数値(概略でよい。)を用いて記述すること。書かれた論文を評点する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを特に重視する。

出典:公益社団法人 日本技術士会
平成28年度技術士第二次試験問題〔総合技術監理部門〕必須科目 I -2

なお,書かれた論文(あなたの解答)を評価する際,記述の論理的なつながり,工夫をこらした対応策の提案,そして論文全体としてのまとまり,を特に重視する。

出典:公益社団法人 日本技術士会
平成26年度技術士第二次試験問題〔総合技術監理部門〕必須科目 I -2

「論理的なつながり」がある文章の書き方

技術士試験では、PREP法をおすすめします。

理由は、「①結論(Point)」⇒「②理由(Reason)」⇒「③具体例(Example)」⇒「④まとめ(Point)」の順に書くことで、説得力ある文章となる定番の型であるためです。技術士試験当日の時間がない中、頭が真っ白にならずに済みます。

「技術士試験の過去問(二次試験:総合技術監理部門)」の(記述式 Ⅰ-2)では、「①結論」として問題、課題、解決策を書いた後、「②理由」と「③具体例」をセットで書きましょう。

問題、課題、解決策だけを書いては、「論理的なつながり」はありません。また、理由だけ、具体例だけを書いても、「論理的なつながり」はありません。

例えば、以下のように述べては如何でしょうか?

 「①結論」:(技術士試験問題に応じて、)「問題は、○○です」、「課題は、~~です」、「解決策は◇◇です」 ⇒ 文章全体の主張や結論を一言でまとめます

 「②理由」:「理由は3つあります。1つ目の理由は、△△です・・・」 ⇒ ①結論に対する理由を述べます。

 「③具体例」:「具体的には、□□の事例があります」 ⇒ 理由の数に対応した実例を述べます。理由の根拠です。

 「④まとめ」:「以上をまとめると、☆☆です」 ⇒ 主張をまとめて繰り返します

PREP法の例を、1つ考えてみます。
 「①結論」:成績を上げるため、朝の勉強を取り入れよう。
 「②理由」:理由は、脳科学者が「最も脳が活性化する朝の勉強は効果的である」と述べていたためである。
 「③具体例」:同期で最も成績が良い友人も、朝の勉強習慣がある。
 「④まとめ」:だから、成績を上げるため、有効な朝の勉強を取り入れよう。

「論理的なつながり」がある文章を書く力

「論理的なつながり」がある文章を書くには、論理的思考力が必要です。論理的思考力は、複雑な物事を整理して因果関係を把握した上で、筋道を立てて考えられる力です。論理的思考力を鍛える方法は、以下の5つがあります。

1. 演繹法(三段論法)

演繹法とは、一般的に正しいと判断されている「大前提・小前提」から、無理がなく適切なことと思われる結論を導く方法です。もともと知っている法則や理論に当てはめて結論を考えます。演繹法の代表的手法である「三段論法」は、法律家がよく使います。

演繹法の例を、1つ考えてみます。

 大前提:すべての人間は死すべきもの。
 小前提:ソクラテスは人間である。
 結論:ゆえに、ソクラテスは死すべきもの。

演繹法の例を、もう1つ考えてみます。

 大前提:水は通常100℃で沸騰する。
 小前提:この液体は水である。
 結論:ゆえに、この水も100℃で沸騰する。

演繹法のメリットは、前提が正しければ自分が経験していなくても結論も正しいことになるため、非常に説得力のある論理展開ができることです。演繹法のデメリットは、初めに前提を知っていなければいけないこと、誤った前提から間違った論理展開をしても気付かれにくいため、前提が本当に正しいのか、様々な角度から検証する等の注意が必要です。

2. 帰納法

帰納法とは、様々な事例を集めて傾向をまとめ、結論につなげる方法です。今までの実験や具体例から結論を推測します。一般的にビジネスでは正しい前提があまりないため、よく使われます。

帰納法の例を、1つ考えてみます。

 事例1:ソクラテスは死んだ。
 事例2:ナポレオンも死んだ。
 事例3:ソクラテスとナポレオンは人間だ。
 結論:だから、すべての人間は死すべきもののようだ。

帰納法の例を、もう1つ考えてみます。

 事例1:今まで、家で100回水を沸騰させた。
 事例2:すべて100℃で沸騰した。
 結論:だから、この水も(すべての水は)100℃で沸騰するようだ。

帰納法では、複数の事例に基づき結論を導くため、結論は絶対的な真実ではなく、あくまでも「~のようである」という推論となります。しかし、メリット・デメリット両方の事例を偏りなく数多く集めることで、説得力を増すことができます。

帰納法のメリットは、複数の事例に基づき結論を導くため、大原則や理論が分からなくても素早く結論を推測できることです。帰納法のデメリットは、複数の事例や推論の方法を間違えると間違った結論になることです。

3. MECE

MECEMutually Exclusive, Collectly Exhaustive」とは、「ダブリがなく・モレがないように」要素を洗い出し、物事を論理的に分解する方法です。調査報告書等、情報収集方法が重要な場面で役立つ考え方です。

【MECEを切り分ける軸の例】

  • 対立概念:既存・新規、社内・社外
  • 数値:年齢、年収、時間帯
  • 時系列・手順:現在・過去・未来、提案・見積り・受注・請求等のプロセス
  • 要素:小学校・中学校・高校・大学
  • 数式:「売上=数量×単価」「利益=売上-費用」

MECEを使うと、様々な切り口から全体像を把握でき、無駄な重複を省いて、ヌケモレのない分析ができます。

4. ロジックツリー

ロジックツリーとは、1つの論点をツリーの最上部に置き、下に向かって要素を枝分かれさせながら問題の原因を探る方法です。問題を分解する過程で、MECEに従い「ダブリがなく・モレがないように」要素を洗い出すことが重要です。ロジックツリーは、問題を把握し、様々な視点から解決策を探りたい場合に有効な方法です。

5. ピラミッドストラクチャー

ピラミッドストラクチャーは、主張と根拠、根拠を裏づける事例を図式化する方法です。根拠・事例を明確に示すことにより意見を整理でき、矛盾点の修正をしやすいため、主張に説得力を持たせることができます。

ピラミッドストラクチャーを使うと、主張⇒根拠⇒事例の順に、論理構造を分かりやすく視覚化できるため、論理が立たない状態を回避できます。